高森クリニック【仙台市泉区】
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糖尿病とメタボリックシンドローム

平成18年11月29日、泉区での生活習慣病予防週間事業の一環として、泉区役所にて約50名の区民の参加を得て、「糖尿病とメタボリックシンドローム:糖尿病予備軍にならないために今からできること」というテーマで講演をしました。また平成18年12月9日には、南光台市民センターにおいて泉区医師医談会主催の糖尿病教室で約20名の参加を得て講演をしました。その要旨をお伝えします。


糖尿病の頻度
3〜4人に1人が糖尿病もしくは予備軍ご存知のように、平成9年から5年毎に糖尿病人口の推計がなされており、糖尿病は約690万人から740万人へ、予備軍は約680万人から880万人へ増加し、平成14年には糖尿病+糖尿病予備軍が約1,620万人に達していると推定されています。 ここで糖尿病予備軍というと、「まだ糖尿病になっていないから、まぁいいや」と軽く考える方が多いのですが、後に述べるメタボリックシンドロームとの関連で、実は心筋梗塞や脳梗塞の強い誘因となり深刻な問題となっています。 年齢別にみると加齢に伴い糖尿病は増えていますが、60才以上では予備軍も含めると3〜4人に一人は糖尿病または予備軍と考えられます。驚くべき頻度です。
糖尿病と肥満の関係
糖尿病の発症は、「糖尿病の家系」があることでお分かりのように遺伝が強く関わり、さらに運動不足や肥満などの生活習慣に伴い発症します。 血糖値はすい臓から分泌されるインスリンによってコントロールされています。食後血糖値が上がるとインスリン分泌が増えます。遺伝によって糖尿病になりやすい人では、インスリンの分泌が悪くなります。特に血糖が上がり始めた時のスタートダッシュが遅く、これが血糖異常の始まりとなります。それに加えて肥満や運動不足がインスリンの働きを弱めて、余計に血糖上昇を引き起こします(インスリン抵抗性といいます)。糖尿病と肥満の関係ちなみに、インスリンの分泌には人種差があって、欧米人に比べ日本人を含むアジア人はもともとインスリンの分泌が弱く、少しの肥満でも容易に糖尿病になりやすい宿命を帯びているそうです。中国から来た患者さんに伺うと、最近の経済成長によって食生活も変わり肥満が増え、自動車が増えて運動不足になり、糖尿病になる人がどんどん増えているとの事です。ちょっと前の日本みたいですね。
運動が減っている
運動が減っている国がすすめる21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21、2000年)の中間報告によると、20才以上の1日あたりの歩数は男性の目標9,200歩/日でしたが、5年後には約8,200歩/日から7,500歩/日に減っています。女性も目標8,300歩/日でしたが、約7,300歩/日から6,400歩/日に減ってしまいました。どんどん運動する機会が減っています。
現代人は脂がお好き!
現代人は脂がお好き!肥満も増えています。食品の栄養素で脂肪摂取、特に動物性脂肪の摂取が増えています。過去50年の間に総脂肪摂取は約3倍にふえ、動物性脂肪摂取は何と4倍に増えています。現代は「脂まみれ」の世の中なのです。一方、1日の摂取カロリーはあまり変わっていません。 私は仕事の関係もあって(?)しょっちゅうコンビニを利用し昼・夕食をとります。オニギリでも1個200カロリーくらいあります。カレーパンのような揚げパンは1個400カロリー近くもあって驚きました。高齢者や小柄な糖尿病患者さんでは1日の食事療法で1,200カロリーの人もおりますので、何とカレーパン1個で1食分のカロリーになる勘定です。揚げ物はとにかく要注意です! 【最近耳にするメタボリックシンドローム】 最近メタボリックシンドロームという言葉をよく聞きます。その意味は、肥満者の多くが糖尿病・高血圧・高脂血症といった、心筋梗塞や脳卒中の原因になる危険な病気を複数合併している事が多いという現実、さらに生活習慣を変え内臓脂肪を減らして減量することでこうした病気が改善できるという関係を示しています。お腹の中にたまった脂肪(内臓脂肪)はやっかいで、実に様々な物質(ホルモンのようなもの)を出しています。脂肪体積が大きければ大きいほどたくさん分泌します。インスリンの働きをじゃまして血糖値を上げる、血圧を上げる、中性脂肪を上げる、血栓を作りやすくするなどの物質です。実際メタボリックシンドロームを有する人は、脳疾患や心疾患が2-3倍多く発症します。
沖縄を他山の石に
沖縄を他山の石にメタボリックシンドロームに関し「沖縄クライシス」とか「26ショック」という言葉があります。元来、沖縄というと健康的で長寿の県というイメージでしたが、平成12年(2000年)の男性の平均寿命は全国26位に下落した事が分かったのです。高齢者や女性はまだ長寿なのですが、中・若年層の肥満が増加し、男性で生活習慣病の検診を受けた人の約50%が肥満で、20%近くがメタボリックシンドロームでした。平均寿命の低下は50-60才代の男性の高い死亡率が原因で、それにメタボリックシンドロームが関与していると考えられています。沖縄は外食産業が日本一盛況な県なのだそうです。
予防
予防とにかく内臓脂肪を減らす努力をしましょう。そうすれば生活習慣病を発症させる物質が減ってきます。内臓脂肪は増えやすい一方で、減りやすい脂肪と言われています。 通院中の患者さんでいろんな工夫で減量や運動をし、血糖や血圧が改善した例を紹介しました。 運動しなくなっているので運動しましょう。ウォーキング、自転車、水泳、水中ウォーク、ジョギング、スポーツ、スクワット、ラジオ体操、ペットボトルのダンベル体操、何でもいいです。バス通勤なら一駅手前で降りて歩くなどはよく知られていますが、会社では階段を昇ってエレベータは使わない(10階とかなら途中までエレベータを使う、平屋だったらどうしましょう?)、買い物はわざと遠くのお店でする、大型ショッピングセンターに買い物に行くとき奥さんについていって自分は品物を見ながらグルグル歩き回るとか。 食事は油分を減らし、野菜をいやになるほど食べましょう。テレビの影響で例えば寒天やこんにゃく療法とかキャベツや玉ネギ療法とか皆さん実践していますが、この程度ならかまいませんからとにかくやるのなら1年は続けてください。次々浮気して変えていくのは感心しません。もっとも、テレビがいつも正しいとは限りませんのでこうした療法を実践しようと思ったら先生に相談して、OKをもらってください。 夜遅く食べないようにして成功した患者さんもいます。どうしても遅くなる場合は、極力少ない量にしましょう。 太っている人は食事をあっという間に食べてしまう傾向があります。食事時間をゆっくりにすれば食べる量を減らすことが出来ます。これも患者さんが自ら実行した事ですが、主食を「白米から玄米に替えた」人がいます。玄米は硬いので噛むのに時間がかかり食事時間を延長できるそうです。また最初にたくさんの野菜を食べる事で少しお腹を満たしたり、玄米と同じくいっぱい噛むと顎が疲れて来るそうでこれもたくさん食べなくする方法になるようです(実践した肥満の患者さんが言ってました)。女性ではなんといっても間食の問題があります。家族の協力も必要ですが、買わない・目に付くところにお菓子を置かない・注意してもらうなど。患者さんに聞くと、意外に家族でも病気に良くない事をすすめてくるのだそうです。合併症に苦しんだ時に、家族といえども身代わりになってくれるわけでもないのでそこは気持ちを強く持って療養してください。

以上が講演の要旨でした。またいつか講演したとき、興味ある質問などをされたときご紹介しましょう。


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